環境関連

ディーゼル燃焼とPMの化学的性状

ディーゼル排出ガス中の99.9%以上はガス状の成分であり、残りの100ppm程度が粒子状物質(PM)となります。PMの化学的な性状はエンジンの運転条件や燃料の性状、燃焼状態によって大きく異なります。

ディーゼルエンジンの燃焼は、燃料を高圧でシリンダ内に噴射することにより、微細な燃料液滴に分裂して、燃料噴霧と高温空気との混合気を作る。混合気は、高温中で低級炭化水素に分解して、着火に必要な温度と濃度に達した特定の場所で火炎核が発生し燃焼が開始します。このとき、混合気は空間的、時間的に不均質な状態で分布しており、当量比が1に近い領域では、2,000K以上の高温となり一酸化炭素(NO)が生成されます。当量比が1より大きい燃料過濃な領域では、酸素不足となってスス(Soot)が発生します。逆に当量比が1より小さい燃料希薄な領域では、部分的に酸化した燃料が未燃のまま取り残されます。これらのススや未燃の炭化水素成分がエンジンから排出されて排気煙となるのです。したがって、排気煙には、エンジンの高負荷時に排出される黒煙と冷態時や低負荷時の青白煙が含まれるのです。 環境 一般的には、ディーゼルPMは元素状の炭素からなるススの周囲に比較的沸点の高い有機物や硫酸塩などが吸着しているものと考えられています。

ディーゼルPMを元素別に見ると、主元素は炭素(C)でありPMの60%を占めています。その他、リン(P)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)などの金属分も微量ながら含まれています。

PMは、排気煙をフィルタに捕集して質量濃度で評価したもので、有機溶媒に溶ける可溶有機分(Soluble Organic Fraction:SOF)と不溶分(Insoluble   Organic Fraction:ISF)に分けられます。可溶有機分(SOF)の成分は、未燃燃料と潤滑油であり、不溶分(ISF)の成分は、固形炭素物(Solid   carbonまたはスス:Soot)および硫黄酸化物(サルフェート:Salfate)です。

スス(Soot)は、PMの中でも特に燃焼(=酸化)が難しいといわれています。

可溶有機分(SOF)の割合は、エンジンの型式や運転条件により異なり、重量でPMの数%~80%程度を占めます。

スス(Soot)や可溶有機分(SOF)の排出量は、エンジンの運転状況に大きく左右されますが、硫黄酸化物(サルフェート)は燃料中の硫黄分に大きく影響を受けます。

ディーゼルPM中には、微量ながら極めて多くの物質が含まれていますが、CARB(米国カリフォルニア州環境保護庁大気資源局)は、ディーゼル排出ガス中に含まれるTAC(有害大気汚染物質)として、40種類以上のガス・物質をリストアップしています。