環境関連

ディーゼル排ガスから新物質発見

ディーゼル車の排ガス中から、強力な変異原性を持ち、がんを引き起こす可能性の大きい未知の物質を、国立公衆衛生院の久松主任研究官、京都大学理学部の鈴木教授、京都薬科大の平山教授らのグループが発見しました。

既知の物質だけでは、ディーゼル排ガスの発がん性の七、八割しか説明できないため、久松さんは別の「犯人」を探し続けていました。

排ガス成分中の粒子状物質(PM)を分析した結果、ベンゼン環が四つ繋がったベンズアントロンにニトロ基(NO2)がついた3ニトロベンズアントロンという新物質が発がん物質の候補にあがりました。

そこでニトロ化合物合成に経験のある鈴木教授に依頼し、純粋な新物質を作ってもらいました。この物質を使い、サルモネラ菌に突然変異を起こす度合い(変異原性)を調べるエームズ試験を実施しました。ベンズアントロンは無害なのに、3ニトロベンズアントロンはベンゾピレンの数千倍の強さの変異原性があることが分かりました。

鈴木教授によると、3ニトロベンズアントロンは、エンジン内の高温高圧下での軽油の燃焼過程でできるほか、夜間に濃度の高いオゾンのせいで排ガス中の窒素酸化物(NOx)と無害なベンズアントロンが反応してできることも考えられるとしています。

久松さんは「排ガス中で最も強い発がん性を持つとされてきた1、8ジニトロピレンと同じくらいの変異原性だが、3ニトロベンズアントロンの方が壊れにくく、量もやや多い。発がんの危険性では、量の多いベンゾピレンよりも上ではないか」と話しています。